next up previous contents
Next: 物理学演習B(第21回) 1991年11月25日 (飯高) Up: Problems Previous: 物理学演習B(第19回) 1991年11月12日 (飯高)
VISIT MY BOOKSHELF
http://www.iitaka.org/


物理学演習B(第20回) 1991年11月19日 (飯高) (5.3節:微細構造とゼーマン効果)

第1部:角運動量の合成とスピン−軌道相互作用

水素様原子の価電子の軌道角運動量演算子を、 スピン角運動量演算子をとする。は、 それぞれ角運動量の基本的交換関係

を満たし、は互いに交換する。

【1】 全角運動量演算子をで定義すると、 も交換関係

を満たすことを示せ。

【2】 四つの演算子が 互いに可換で、同時観測量になっていることを示せ。

【3】 全角運動量の自乗が

とかけることを示せ。

【4】 四つの演算子が 互いに可換で、同時観測量になっていることを示せ。必要ならば前問の結果を 用いよ。

【5】 次の文中の空欄を埋めよ。

以上のことから、角運動量の基底ケットの選び方には、 選択A:

  と 選択B:

  の二つの選び方がある。

【6】 与えられたl,sに対して、この二組の基底を結び付ける ユニタリー変換が存在し

と書けることを示せ。この変換係数を クレプシュ・ゴルダン係数と呼ぶ。

【7】 クレプシュ・ゴルダン係数は、次の条件を満たさないとゼロになる。

まず、演算子の恒等式

で挟んで条件(1)を証明せよ。

つぎに、条件(2)を角運動量合成のベクトルモデルの観点から説明せよ。 (厳密な証明は、JJ上巻付録Bをみよ)

【8】 水素様原子の価電子を考える場合、電子のスピンはだから、 である。このとき、【7】の条件は

となる。

このとき、クレプシュ・ゴルダン係数は

となる。空欄に正の実数を入れよ。(ヒント:変換行列のユニタリー性を使え。) 厳密な導出は、JJ3章7節をみよ。

【9】 演算子

と書けることを示せ。

【10】 演算子の固有ケットがであり、 固有値が

となることを示せ。

【11】 水素様原子の価電子のハミルトニアン

について、を摂動として扱うことに依って、微細構造に 関するランデの 間隔則JJ(5.3.9)式を求めよ。

第2部:ゼーマン効果

一様な磁場中の水素様原子のエネルギー状態を考える。

【1】 ベクトルポテンシャルは、

と表せることを示せ。

【2】 水素様原子のハミルトニアンに対して、

の置き換えをすると、磁場中でのハミルトニアン

が得られることを示せ。ただし、 となるクーロン・ゲージを用いれば、で置き換えられる。

【3】 前問のハミルトニアン中のベクトルポテンシャルを 【1】の磁場で表せば、

となることを示せ。

【4】 前問のハミルトニアンのうち、重要でないの 項を省略し、スピン磁気モーメント相互作用

および、相互作用を考慮すると、全ハミルトニアンは

となることを示せ。

【5】 磁場が弱いとき 、を非摂動ハミルトニアン、 を摂動項として扱える。非摂動状態lに関する縮退は解けているので、mに関しての2j+1重の縮退のみが 存在する。縮退している空間内での摂動の行列要素が対角化さ れている ことを示せ。必要ならば、第1部【8】のクレプシュ・ゴルダン係数、m選択則 を用いよ。

【6】 前問の結果より、縮退している部分空間内では 対角化されているので、 1次のエネルギーのずれを求めるのに、単に非摂動状態で期待値をとればよい。 ランデの公式

を求めよ。下線部は、ランデのg因子と呼ばれる。

【7】 磁場が強いとき(パッシェン・バックの極限) 、を非摂動ハミルトニアン、 を摂動項として扱える。非摂動状態 を用いて、磁場によるエネルギーのずれ

を導け。

【8】 前問の結果より、の下で持っていた に関する重の縮退は、 磁場が強いときには によって解け、残った縮退はが同じ値をとるときの 2重の縮退() のみである。縮退している部分空間内で摂動が対角化されてい ることを 示せ。必要ならば、

を用いよ。

【9】 摂動項により、2重の縮退も解ける。 による1次のエネルギーのずれが

となることを示せ。



Toshiaki Iitaka
1996年07月25日 (木) 20時44分21秒 JST